ヨーキー椛(もみじ)、ドッグダンスするよ!

顔も体も態度もでかいヨーキーの女の子、椛(もみじ)のドッグダンスやお出かけ、さりげない日常の出来事などの記録です。

犬の医学的考察~犬が人に懐くのは発達障害のおかげ!?~

犬は人間に対してとてもフレンドリーな存在です。犬と人間、両者の相性がこれほど良い事についての興味深い医学的研究があるので紹介します。


遺伝子解析による研究ですが、
『犬が人間に懐くのは、実は遺伝子由来の発達障害によるものだった。』
というものです。


Scientific Advances誌のオレゴン州立大学の研究者らによる研究では、犬の愛らしさに関する科学的な説明が試みられました。
それによると、数万年前に犬が狼から進化する過程で起きたある種の遺伝子の変異が、犬たちの人懐こさを産み出した可能性があるとの事です。


犬に於ける遺伝子の変異は、人間に於けるある種の発達障害における遺伝子変異と類似している事が示唆されています。
狼の遺伝子配列に比べて犬の遺伝子が、人間のウィリアムズ症候群の人々が持つ遺伝子の変異と類似したものを持っているというのです。


ウィリアムズ症候群とは、1961年に医師J.C.P.ウィリアムズにより報告された疾患です。
具体的には、7番染色体(7q11.23)の微細な欠失に起因する変化です。
この欠失範囲には約20個の遺伝子が含まれますが、その中でエラスチン遺伝子の欠損(正確には本来2つある遺伝子が1つのみとなっている部分欠損)は大動脈弁上狭窄などの心血管疾患に関連し、そしてLIMK1遺伝子の欠損は視空間認知障害に関連するといわれています。
これらの疾患や障害がないケースでも社会的抑制の欠落や、外向的性格、時として知的障害などの症状を伴うとされています。


ウィリアムズ症候群は7500人から2万人に1人の割合で発症するとされていますが、診断されていないケースも多く存在すると推定されるため、実数はもっと多いのではないかとも言われています。


ウィリアムズ症候群では、知能低下に比べて言語は比較的良好に発達することが知られていて、家族や友人はもとより、知らない人にも陽気に多弁に話しかける傾向があるとの事です。
自閉症の正反対の疾患と考えられています。
そのため、ウィリアムズ症候群は俗称で”病的に音楽好きな人々”と呼ばれる事もあるそうです。


このオレゴン大学の研究では、飼い犬18頭と捕獲した野生の狼10頭を対象に、社会的刺激への注意バイアス、超社会性、他者への社会的関心という3つの基本的特性の調査が行われました。
ある課題が与えられたとき、犬には人間に気を取られる傾向がありました。これは、社会的刺激への注意バイアスの高さを示すものです。
また、犬は狼よりも人間に接近する傾向が強く、超社会性の高さも示唆されました。
一方、他者への社会的関心という面では、犬と狼の間に有意な差は見られませんでした。
この結果より、元は同じ種であった狼と、犬=7番染色体の異常を持つ狼の差異が、遺伝子レベルで規定されるいわゆる発達障害によるものであったのは興味深い話です。


このオレゴン大学の研究結果では、人間に対する犬の愛想の良さや、熱心さ、従順な性格の理由の解明に新たな方向性を示す可能性を秘めています。
研究者らは、将来的には猫などのペットにも同様の遺伝子が備わっているかどうかの調査を進めていく予定であるとの事です。


それにしても、『犬が、ある種の発達障害を持った狼である』という学説は非常に興味深いものがあります。
人間に必要以上にフレンドリーであるという、狼版の発達障害が犬の性格の根源にある。
そのウィリアムズ症候群と酷似した発達障害があるがゆえに、犬は狼社会では適応障害とされ、社会性がないとされました。
(人間に対して警戒心が無く、フレンドリーに接する狼というのは、狼社会では群れの秩序を乱す存在、適応障害の狼と見なされるという事です。)
しかし、我々人間にとっては、その発達障害のために、犬と種族を越えた深い絆を結ぶ事が出来、かけがえのない友を得たという事になります。
たいへん、興味深い学説です。


これらの事例を見ると、気づかされることがあります。
発達障害は個性であるという点です。(障害という呼称を使うべきではない、との意見もあると思いますが、これは言葉の混乱を避けるために、このまま呼称しています。)


個性には、優れた面と劣ってしまう面がある。
しかし、ある人やある集団にとっては適応しがたい、劣っていると思われる点も、他の人にとっては好ましい、優れている点である可能性があるのです。


このオレゴン大学の研究は、犬と人の絆を理解する上だけでなく、我々人間の尊厳を再認識する上に於いても、貴重な、そして勇気を与えてくれる研究であると考えます。



参考までに、
<<研究の概要は以下>>
Although considerable progress has been made in understanding the genetic basis of morphologic traits (for example, body size and coat color) in dogs and wolves, the genetic basis of their behavioral divergence is poorly understood. An integrative approach using both behavioral and genetic data is required to understand the molecular underpinnings of the various behavioral characteristics associated with domestication. We analyze a 5-Mb genomic region on chromosome 6 previously found to be under positive selection in domestic dog breeds. Deletion of this region in humans is linked to Williams-Beuren syndrome (WBS), a multisystem congenital disorder characterized by hypersocial behavior. We associate quantitative data on behavioral phenotypes symptomatic of WBS in humans with structural changes in the WBS locus in dogs. We find that hypersociability, a central feature of WBS, is also a core element of domestication that distinguishes dogs from wolves. We provide evidence that structural variants in GTF2I and GTF2IRD1, genes previously implicated in the behavioral phenotype of patients with WBS and contained within the WBS locus, contribute to extreme sociability in dogs. This finding suggests that there are commonalities in the genetic architecture of WBS and canine tameness and that directional selection may have targeted a unique set of linked behavioral genes of large phenotypic effect, allowing for rapid behavioral divergence of dogs and wolves, facilitating coexistence with humans.

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