ヨーキー椛(もみじ)、ドッグダンスするよ!

顔も体も態度もでかいヨーキーの女の子、椛(もみじ)のドッグダンスやお出かけ、さりげない日常の出来事などの記録です。

犬の物語~映画 『犬の生活』チャップリン~

私の大好きな映画、チャーリー・チャップリンが1918年に制作した映画『犬の生活』です。



☆映画の内容については、懐かしの淀川長治さんの名解説が秀逸ですので、引用して以下に載せます。(淀川さんの名文句がありありと浮かんでくる文章です)☆


もう最も、最も最も好きなチャップリン、それの『犬の生活』、この話しましょうね。


“DOG’S LIFE”で、『犬の生活』と言う題で出ましたけど、『犬の生活』言うのはもう何ともかんとも知れない苦労の苦労の悲しい悲しい生活を『犬の生活』と言ったんですね。『DOG’S LIFE』と言ったんですね。
これはチャップリンが本当に小さい頃、苦しんだ苦しんだ苦しんだ事が見事な美術、芸術になって現れるている映画ですね。で、この映画ご覧になったらチャップリンのオリジナルが分かりますね。


チャップリンはお腹が空いたし仕事が無いしふらふらしているけれど、そこに“男子一名要り様”と書いてあったので、喜んでチャップリンはそこに行ったら、後ろに15人並んでるんですね。不景気の頃ですね。そうして“男子一名要り様”の切符もらう時にチャップリンが手を出したら、後ろから5番目の大きな男がバーンとチャップリン蹴ってその権利のふだを取っちゃったんですね。
チャップリンはもうがっかりして、がっかりして、一人で歩いてある垣根の前で倒れて、そうして「ああ、ここで一人寝ようか」、けど、お腹が空いて眠れないんだね。ところが後ろに「ホットドッグ、ホットドッグ、ほやほやのホットドッグ」と売りに来たんですね。チャップリンその匂い嗅いでああ、欲しいな欲しいな思って「神様、神様、この一つのホットドッグ今盗みますけど、明日必ず返します。」それで、そろ~と後ろへ行ってホットドッグ一つ盗んだんですね。ほやほやの。「ああ、これで昨日から何も食べて無いからこれで助かったな。」とチャップリン口開けてあ~んと食べようと思ったらそこへ痩せた痩せた痩せた可哀想な犬がやってきたんですね。
チャップリン食べかけたけどやめて、その犬にやろうと思ってパッとやったら犬が喜んで取ろうと思ったら隣から大きなブルドッグやって来てボーンと蹴ってそのソーセージ持って逃げたんですね。考えたらお前と俺とは同じだなあ、と言うのでチャップリンは自分の事も考えないでその犬を抱いて職業を探す話しなんですね。それが『犬の生活』ですね。


いかにも綺麗な面白い映画でしたよ。チャップリンがこういう愛の生活を映画にしだしたのはこの『犬の生活』からですね。

この『犬の生活』が創られた1918年の時代背景はどうだったのでしょうか。
第一次世界大戦が終結したばかりで、欧州各国は戦禍で疲弊。
また、その後にはスペイン風邪が世界中で流行して、少なくとも1740万人が死亡したとされています。現在の新型コロナウィルス感染症の比ではないですね。


その後の1920年には戦後の景気後退が起こり、人々の貧富の差が拡大します。1929年には大恐慌が起こり世界は大混乱に陥り、保護主義が台頭し、第二次世界大戦へと繋がって行くのです。


この期間は、産業革命の進展に伴う歪みが最も大きくなった時期でもあります。
貧富の格差が広がり、社会階級の差別化が形成されます。
上流社会と下層階級が明確に区別され、社会に不安と不満が渦巻いていました。


そんな時代にあって、金銭的余裕のない下層階級、労働者階級の最大の娯楽が映画でした。
そんな大衆の英雄として認識され、圧倒的に支持を得たのが、この映画の主人公=”放浪紳士チャーリー”だったのです。


それまでのチャップリンの作品は、ドタバタ喜劇の流れを組む作風で、主人公チャーリーは、笑いをとるためには何でもありの感がありました。
しかし、この『犬の生活』では、労働者階級の中でも恵まれない存在でありながら、他人に恨みを持ちません。
さらに、弱い野良犬に手を差し伸べ、共感し、困っている酒場の少女を助けます。
そして、警官という権力の象徴をおちょくります。


チャーリーは、一文無しで、住む家がなくとも、腹が減っていても、人間としての優しさを忘れず、紳士の誇りを持っています。
『ボロは着てても心は錦』ですね。


反対にどんな金持ちでも、権力者でも、優しさや誇りを忘れた人は、人間として劣っているのだとメッセージを発しています。
それ故、その当時の庶民は、チャップリンの映画に熱狂したのでしょう。


チャップリンは自伝では、”チャーリー”に関してこう書かれています。
『チャーリーの小さな口髭は自分の虚栄心。不格好で窮屈な上着とダブダブのズボンは人間が持つ愚かしさと不器用さ。同時に物質的な貧しさにあっても品位を維持しようとする人間の必死のプライド。そして大きなドタ靴は貧困にあえいだ幼い頃の忘れえぬ思い出だ。』

『犬の生活』、コメディにおける犬の重要性、ストーリー物における犬が放つメッセージ性などが描かれている名作と思います。
犬にまつわる古典映画といわれて、真っ先に思い浮かんだ作品でした。

まだ見ていない方は、ぜひ見てください。
お勧めです。


実はこの『犬の生活』、ビデオテープで持っています。懐かしいです。

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