ヨーキー椛(もみじ)の物語~6.ママ、匙(さじ)を投げる!~
椛には、根本的なところから教育が必要。
そして、ついにママが立ち上がった。
トイレなどの躾は出来ていて、何事にも動じない度胸と、あふれる好奇心。こんなに良いところを持っているのに、それを打ち消して余りある問題行動。
それが椛でした。
椛が家に来てから3日目。ついにママが本気を出す時が来ました。
騒いだ時には、先ずは言い聞かせから。
『椛、騒ぐんじゃありません。ママの目を見なさい』と言いながら椛をじっと見つめます。
本気の目です。迫力のある、そうとう恐ろしい目です。
(私は、まじめに怖いと思いました。)
しかし、椛、怯みません。ママの目をじっと見返します。
我慢できずにママが先に視線を外しました。負けてどうする!
『椛、判ったわね。』
これでは効果はありません。
直後に椛はまた騒ぎ始めます。
ママはついに最後の手段に出ます。”お尻ペンペン”の発動です。
『椛のためだからね。騒いじゃダメだからね。』
と言いながら、お尻の横を叩きます。
叩きながらもママの心は傷ついていきます。つらいです。悲しいです。
しかし、当の椛は平気な顔です。
”お尻叩かれましたけど、それが何。ちょっと痛いけど別に。”
椛はこんな感じで平然としています。
そして、ついにママの心が折れました。
お尻ペンペンは、椛には何の効果もなく、ママにダメージを与えて終わりました。
『椛には、根気よく言い聞かせるしかないんだね』
そう言ったものの、妻は途方に暮れつつありました。
我々が今まで飼ったり、接してきたワンちゃんは、すべて基本的には言葉でしつけが出来ていました。
しかし、椛は違います。
何か根本的なところが大きく違っています。
しかし、どこが違うのかという点から我々は判らず、戸惑うばかりでした。
夜になりました。
今夜も椛はカタカタ騒ぎ始めます。
そこでついに、ママは匙を投げた!
別にあきらめたという意味ではありません。リアルに匙を投げたのです。
昼間のテレビで、ちょうど犬の教育の話が放送されて、騒ぐ犬を一発で大人しくできる方法として、金属類を犬の近くだけど安全な位置に投げて、大きな音をさせるという事が紹介されていました。
そこで、その夜、ママが秘策として、家の鍋蓋、スプーン、フォークなど金属類をまとめて投げたのです。
ガラガラガッシャーン!!
椛のいるケージのすぐ横に投げられた金属類は凄まじい音を立てます。
匙などを投げた金属音の効果は絶大でした。椛、一発で大人しくなりました。
これは良かった、ひと安心。そう思ったのですが・・・。
その後も何度か匙等を投げました。最初は効果抜群でしたが、そのうち慣れてきたのか効果は徐々になくなっていきます。
翌日には、椛はすっかり慣れ切って、匙を投げての金属音は全く通用しなくなりました。
万事休すです。
こうなったら躾のプロに相談しよう。
藁をもすがる思いでネットで犬のしつけ教室を検索し、面接に来てもらうこととしました。
訪問していただいたのは、吉祥寺に個人で犬の幼稚園を営んでいる方でした。
彼は、椛を一通り見て我々にアドバイスをしてくれました。
躾に通った方が絶対に良い。自分のところは遠いので、近くて通いやすいところを紹介するからとおっしゃってくれて、彼が以前勤めていた”プレイボウ稲城”という所を教えてくれました。
そして付け加えました。
『行くなら、1日でも早い方が良い』
犬を飼ってこんなことになるとは夢にも思いませんでした。
椛とうまくやっていくことなんてもう出来そうにない、などと悲観的な考えが次第に広がりつつある状況でした。
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