ヨーキー椛(もみじ)の物語~7.椛、幼稚園に行く~
暮らし始めて数日、椛のお転婆ぶりに振り回され続ける日々。
さーて、どうしたものか。
よし、プロに任せよう。
最初に相談したトレーナーに紹介されたのはプレイボウ稲城という犬のしつけ教室でした。
いわゆる犬の幼稚園です。
幸い、家から車で10分弱の距離にあります。
7月6日、椛が来てから一週間。プレイボウ稲城に面接に行きました。
プレイボウは犬の幼稚園で、家から車で10分弱の距離にあります。通いやすく、ママの通勤の途中の場所にある、通いやすい場所でした。
その日の面接を担当して頂いたのは、20代の小柄な男性Sさんでした。
Sさんは、一通り話を聞いた後に、椛をフロアに放し、自由にさせてみます。
椛は初めて来た場所に興味津々。
せわしなく歩き回ったり、他のスタッフに物おじせずに挨拶して回ったりしています。
その様子をじっと観察するSさん。
そして、他のスタッフに、『ちょっとNくん、連れてきて』と一言。
Nくんとは、幼稚園に長く通っているシュナウザーの成犬の男の子でした。
プレイボウ稲城は、犬の幼稚園となっていますが、いろいろな事を行っています。
ひとつは、子犬の教育。
もう一つはドッグホテル。
他にトレーナーの養成も力を入れている様です。
また、教育が終わった犬などの成犬を、飼い主の仕事などの都合で昼間に預かってもらっているケースもあるそうでした。
シュナウザーのNくんは、ガテン系の多いシュナウザーとしては例外的に、手足の長い、顔だちもすっきりとした、品の良いイケメン男子でした。
椛はさっそくNくんに挨拶します。
椛は、基本はフレンドリーな性格で、他のワンちゃんは大好きです。
挨拶してくれるワンちゃんはもっと好きです。
イケメン男子という点にはまだあまり興味がない様ですが。
椛は、本人は挨拶のつもりなのですが、いきなり相手の顔の前に自分の顔を近づけます。
そして、Nくんが礼儀正しくお尻の方に回ろうとすると、激しく動いて、また顔の方に行こうとします。
顔にいきなり行くのは失礼な事や、お尻のにおいを嗅ぐ意味すら知らないのだな、とつくづく感じました。
以前に飼っていたチェリーというシュナウザーの女の子は、幼いころから犬としての知恵や常識がある子でした。
チェリーは、妻の家で生まれて、そのままそこで育ちました。
物心ついた時から、犬としての基本的な事はすべてお母さん犬のベティが教えていました。
人や犬との接し方、トイレの習慣まで、飼い主よりも母犬が教えたことの方が多かった気がします。
その点、椛は基本的な事を含めて、驚くほど何も知らないのでしょう。
だから、ご挨拶一つとっても、悪気はなくてもこんな行動になってしまうのでした。
椛は、さかんに挨拶と思っているが、実は失礼なことを続けます。
Nくんは、黙ってじっと見ています。
『見ていてください。そのうちNくんが椛をしかりますよ。』
Sさんが我々に話しかけます。
椛は、いまひとつノリが悪いNくんにしびれを切らしてきたようです。
いきなりNくんの顔の前で2本足で立ち上がり、前足を大きく開きます。
椛にしては挨拶の一環なのでしょうが、相手にしたら、飛び掛かられる様に感じてしまう、危険を感じる行為です。
その瞬間、Nくんが行動を起こしましす。
長い手足を伸ばして体を大きく見せて、『ウォウ、ワン!』と鋭く吠えました。
そして、何事もなかったように、お座りをし直します。
椛は、キョトンとしています。
『ありがとう、Nくん。おつかれさま。』
Sさんは、そう言ってシュナウザーのNくんをねぎらい、他のスタッフにNくんをプレイルームに戻すように頼んでいます。
『犬同士でしか教えられない事、伝えられない事もあります。そういった経験が椛には不足しているみたいですね。それが判れば大丈夫、この子は賢い良い子ですよ。』
Sさんはそう言ってくれました。
何か一筋の光が見えた気がしました。椛と何とかやっていけそうな希望が出てきました。
プレイボウについては、椛も気に入った様子でした。
Sさんにもなついています。
早速、翌日2016年7月7日よりプレイボウに通う事にしました。
最初は20回の基本の訓練から始めるようです。
さあて、どうなる事やら。
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